こんにちは、行政書士の貞夫です。

先日、伊藤塾さんのコラムでちょっと気になる話題が取り上げられていました。
タイトルは「行政書士が廃止され、司法書士に統合されるかもしれない」というもの。

……えっ?
まさかそんな話、あるわけないでしょうと思いつつも、ちょっと気になって内容を読んでみたところ、ネットで実際に噂になったことがあります。

今回の記事では、その噂の出どころから、私たち行政書士としての立場、そして現実的な可能性について、私なりの意見を含めてお話ししたいと思います。

噂の発端は30年前の行政改革だった

まず、なぜこんな噂が今さら出てきたのかというと、実は約30年前の「行政改革会議」にまで遡ります。

当時、「行政書士による書類作成業務の独占を廃止するべきではないか」という議論がなされたことがあったそうなんです。

でも、実際にはどうだったかというと、むしろその後の30年で行政書士の業務は拡大してきました。
法改正が繰り返され、今や「特定行政書士」という制度も生まれ、より高度な法務手続きに対応できる行政書士も増えました。

行政書士ができる独占業務も増加しており、業界としてはむしろ成長してきたと言えるでしょう。

クライアントからは「統合してほしい」という声も

とはいえ、現場に立っていると、たしかにお客様からこんな声をいただくことがあります。

「行政書士さんに許認可の手続きをお願いして、司法書士さんに登記をお願いして……

手間が多いし、正直何が違うのかよくわからないんです」

これ、たしかに一理あるんですよね。
お客様の立場からすれば、「法務の専門家にワンストップで全部やってもらえたら便利」って思うのは自然なことです。

ただ、行政書士と司法書士では、扱う分野も試験制度も実務の中身もまったく異なります。

つまり、それぞれが異なる専門性を持っていて、それぞれの役割があるんです。

たとえば、行政書士は官公庁に提出する書類や契約書などの作成、外国人の在留資格の申請、建設業許可、相続・遺言サポートなどが中心。

一方で司法書士は、不動産登記や会社登記、供託、簡易裁判所の代理権など、登記法務に特化した専門職です。

両者の業務は一部重なるように見えても、実務ではまったく違う知識・スキルが必要とされます。

実現可能性は限りなくゼロに近い

行政書士として私が正直に思うのは、
「行政書士を廃止して司法書士に統合するなんて話、現実にはほぼありえない」ということです。

理由はいくつかあります。

まず、行政書士の人数がとにかく多い。
全国で約5万人以上いると言われており、その数の多さは、政治的にも無視できない存在感を持っています。

さらに、行政書士会をはじめとした組織力やロビー活動も活発です。
実際、私の知人でも、公認会計士の方が政治家になった際、行政書士としても登録して「政治的なつながり」を築いている例があります。

行政書士業務を一切行わないのに、行政書士として登録している議員の方、けっこういるんですよ。
それだけ、行政書士は政治的な影響力も持っているということです。

そんな背景がある中で、「統合するから明日からあなたの資格は廃止です」なんて、そう簡単に決まるわけがありません。

もし仮に統合されたらどうなるのか?

仮にですよ、「行政書士が廃止されて司法書士に統合される」という決定がなされたとしたら、現場は大混乱です。

今いる行政書士はどうなるのか?
自動的に司法書士になれるのか?
それとも司法書士試験を受け直さないといけないのか?

司法書士の人数が一気に増えたら、今度は司法書士業界側が反発します。
需給バランスが崩れれば、報酬単価の低下、案件の偏り、業界の信頼性の低下……
いろんな弊害が生まれてしまいます。

現実的には、資格制度というのは一度確立されたらそう簡単に統廃合されるものではありません。
歴史的に見ても、独立資格が統合されて一方が廃止されたなんてケースは、ほとんどありません。

ですので、「行政書士が司法書士に吸収される」というシナリオは、願望に近い妄想といってもいいかもしれません。

噂が出てくる理由は?

それでもこういった噂がネット上で出てくるのは、いくつか理由があると思います。

1つは、やはり業務内容が一部重なるように見えるから。
たとえば「相続関連」であれば、行政書士も司法書士も関与することが多く、「どちらに頼めばいいかわからない」という方も多いです。

もう1つは、資格業界の中で「勢力争い」的な構図があるから。
業界内での競争意識が、こうした噂話のネタになっているという側面も否定できません。

まとめ:行政書士としての誇りと未来

私は、行政書士という資格と業務に大きな誇りを持っています。
書類作成や許認可申請は、国民の生活や事業活動を支える非常に重要な仕事です。
また、外国人支援、終活、企業法務など、新たなニーズもどんどん広がっています。

私個人的には、噂に惑わされる必要はないと思います。
むしろ、こうした話題が出てくること自体、行政書士という存在が注目されている証拠でもあります。

私たち行政書士は、それぞれの専門性を活かし、社会に貢献していくべき使命があります。
そして、今後も行政書士制度は時代の変化に合わせて進化していくことでしょう。